パイプラインは、水管理操作によって生ずる流況変化の影響が管路系全域へ短時間に波及し、その相互依存度(系を構成するすべての要素の相互影響)、組織としての緊密性は、一般に開水路に比べてはるかに大きい。したがって、種々の水管理操作を行う上で、パイプラインの主体をなす管路部分と各種の機能をもつ付帯施設の組合せ、配置が適切でないと、組織としての機能および安全性の確保に問題が生じる場合も考えられることから、計画、設計、実施から通水に至るまで、常に全体システムとしての整合性の確認を行う必要がある。本道のパイプラインは広域かつ大規模なものが多く、一貫した全体システムに対するチェックの重要性が認識される。パイプラインは地形、水源営農などの地区の諸条件により千差万別で一般論を述べることは不可能であり、先行実施地区例の調査および資料収集を行うことにより、当面全体システムの再評価、後続地区への技術的フィードバックなども手掛けていくことが必要となってきた。この場合、十分理解できない点あるいは新たな疑問点については、当然数値評価(数値シミュレーション)を行って判断を下す必要も生じてくる。本調査は、このような数値評価による判断の前段として、農業水利施設であるパイプラインの水管理操作に伴う水理特性を水理システムと称し、1)実態把握、2)評価(図上シミュレーション、および評価手法の開発、3)数値シミュレーションのための資料収集などを主目的として、実施継続中である。このうち本報では、機構ならびに機能上の送配水系分離を前提として、水源と調整施設(調整池、ファームポンド)、あるいは開水路などの自由水面部を結ぶパイプライン系を送水系と考え、実施地区における水理システムの実態把握を主目的とした調査を実施し、若干の整理をしたので報告する。 |