農業用水の効率的利用等を目的として、用排水系統を一元化した広域な地区での水収支が再検討される場合が多くなっており、さらに、従来の農業用水だけの施設にとどまらず、他種用水との施設の共同利用が望まれる場合もある。特に、長大な水路においては、落差工、ゲート、ポンプ場などが数多く設置されているとともに、取水地点から各圃場への用水到達に大きな時間差が生じるため、複雑な水利用に耐えられる水路系管理の検討が必要になってくる。この検討に先立って、水路内に発生する流況をとらえるためには、現地での実測が重要であるが、広域な地区における数々の水利用時期の同時観測を行う際に要する多大な労力を考えると、これらの調査は必ずしも容易な作業ではない。このため、電子計算機を用いそのソフトウェア中に構成した数理モデル内に、ある一定区間の流況を発生させることにより、さまざまな水理情報を得る手法が開発され、円滑な事業推進に役立っている。このような数理シュミレーションを行う際には、水利施設の諸元や現況水利実態などを調査のうえ、適切なモデルを作成して水理解析を行うことが肝要である。本報告では、数理モデルによる不定流解析の概要、および簡単な解析事例を述べるとともに、現地での調査方法・内容などについて報告する。 |