網走管内の主要畑作物であるばれいしょは、そのほとんど澱原用で、昭和60年で作付け面積26,000ha、収穫量1,000千tであり、特に斜網地帯は、作付面積17,000ha、収穫量700千tである。原料いも1tに対して澱粉約180kgが生産され、残った廃液の肥効分は、T-N2.5kg、P2O5 0.6kg、K2O 3.8kgと昭和58年度調査結果になっている。また、ブロック内の土壌は、火山灰性土で有機質に乏しく、全肥偏重による障害も見られ、近年は澱粉廃液、バーク堆肥等の有機質の投与による土壌改良(地力培養)が積極的に行なわれ、網走市実豊で昭和47年、清里町神威で昭和49年から、スプリンクーラー、タンクローリー等で輸作体制を取り、澱粉廃液が大々的に散布されている。斜網地帯では、散布効果と製造工場の廃液処理の有利性に着目し、この地帯では、昭和48年~昭和53年にかけて、てんさい多目的事業等を行い、主として自走式散水機を使った系統的な散水体制が整った区域が660haに達しており、農業集団等による散布体制のもととのっている。国営畑地帯総合土地改良事業「斜里地区」もこの澱粉廃液の取り組みを行っており、地帯の農業基盤整備事業の進展とともに、今後澱粉廃液利用は増々広がるものと推測される。このため当該農協、改良普及所、市町等は、土壌及び肥効性について追跡調査を行っており、土壌について、昭和59年調査結果では、ほとんど影響がなく、また肥効性については、澱粉廃液散布畑は非散布畑に比較して、麦24.6%、ばれいしょ9.8%、てんさい12%の収量増が昭和57年度の調査で確認されている。一方斜網ブロックの各水系は、河口の湖沼があり「わかさぎ、しじみ貝」の好漁場となっており、前浜は、ホタテ、サケ、マスの優良漁場である。又周辺は、日本三大漁業の一つに数えられていることから、農業の営農改善には、これらの状況を把握したうえで対策をたてる必要がある。調査目的は、この地域の産業の双璧をなす農業と水産業の振興を図っていく上で、両者の調整はさけられない問題となっているので、環境問題に対処するため、澱粉廃液散布による河川への流出の有無の程度及び適切な散布方法、量の把握を行うものである。このため昭和58年から昭和61年にかけて大規模畑作基本調査により澱粉廃液散布における水質影響調査を行なったので、ここに報告するものである。 |