ダムの管理は利水、治水の上で非常に重要である。特に洪水時におけるゲート操作を伴う洪水調節は、下流部への治水安全度を確保するうえで重大な責務を負っている。しかしながら北海道の様にゲート操作を伴う様な大洪水が少ない流域においては、洪水時のゲート操作の実際的能力を経験により養うことは困難である。ダム管理演習はこうした状況を解消するために行われているが、演習用のハイドログラフを作成するのに2~3日もかかる、降雨と流出との関係があいまいである等の問題を内在させている場合が多く、必ずしも効果的な演習とはなっていないものと推察する。しかも年間1回程度の演習で実際に洪水が発生した場合に、はたして管理技術者がうまくシステムを操作できるか?予測システムがうまく作動してくれるか?等の危惧をいだく技術者が多いと聞く。特に最近では管理システムのエレクトロニクス化が進み、管理に係る技術者の担当部分が狭くなってきている。エレクトロニクス機器は平常時には問題なく作動していても、異常気象時に確実に作動するかどうかの保証はない。こうした異常気象時にこそ柔軟な対応をとることのできる技術者が必要とされるのではないだろうか。河川研究室ではこうした北海道におけるダム管理上の問題点を考慮し、現在ダム洪水シミュレータを開発中である。シミュレータは降雨発生器、流量発生器、流水予測器、洪水調節器、画像表示部から成っており、演習者は対話形式で洪水調節の凝似体験をすることが可能である。こうしたシミュレータを多くのダム管理技術者が経験することにより、実際的な洪水調節処理技術の向上につながるものと考える。本報ではシミュレータ開発の前段として昭和62年5月に行ったダム管理演習、水防演習の一手法と、その経験を踏まえて開発中の洪水シミュレータの構成およびその位置付けについて報告するものである。 |