流出解析では、洪水などの2日~1週間程度の期間を対象とする解析を短期流出解析、1~2年程度の期間を対象とする解析を長期流出解析といい、両者を区別している。短期流出解析手法としては、単位図法、貯留関数法、タンクモデル法、Kinematic Wave法などがある。長期流出解析手法としては、タンクモデル法がある。ここで、短期流出解析手法のタンクモデルと長期流出解析手法のタンクモデルとは、名前は同じであるが全くの別物と考えてよい。これら短期流出解析手法と長期流出解析手法では計算時間間隔が異なり、短期解析手法を用いて長期流出解析を行ったり、長期解析手法を用いて、短期流出解析を行うことはできない。以上のようにいままでの流出解析では、短期流出解析と長期流出解析は別々の異った解析手法を用いて行わなければならなかった。本来流出という一つの現象を解析するのに、解析期間により、解析手法が異なるというのは、流出現象を物理的に解明できないことに起因している。そのため我々河川技術者は、解析期間ごとに異った解析手法を用いて流出解析を伝えるモデルが提案された。そこで、このモデルの適用性について、実測データを用いた検討を行い、その結果について述べるものである。ただし、今回の検討では、長期流出について検討を行っている。なお、検討を行ったモデルは長短期流出両用モデルと呼ばれているが、本検討では長短期流出モデルと呼ぶ。 |