尻別川下流部(河口部~18.0km付近迄)は、大きな湾曲部がつらなる蛇行河川であり、この区間の河床材料の平均粒径も1mm以下の細粒砂で占められている。このため湾曲部には深掘れが生じ局所洗掘深(平均河床高と最深河床高の差)は2.0m~3.0m、所により5.0mにも達しており、改修計画や段階施工計画を策定する上で、深掘対策、水衝部対策は重要な課題である。また、蛇行部における水の流れは外側の水位上昇や曲がりの損失等が見られるほか、河床波の発生など洪水規模毎に河床抵抗が変化することが知られており、洪水時、低水時の流況調査は、洪水管理、低水管理上に必要な基礎調査である。尻別川流域は道内有数の豪雪地帯であり融雪期における出水状況や河道の把握は尻別川の河川管理上きわめて重要なことである。昭和62年4月22日、発達した低気圧から伸びる前線が北海道を通過し、尻別川流域には強い風と流域平均15mmの降雨をもたらした。基準地点名駒における水位は、警戒水位6.00mに対し5.98mを記録し、流量は河口付近で900m3/Sで高水敷に冠水する程度の出水となった。このため尻別川下流部の直線部を含む蛇行区間(KP3.2~8.2)で水位・流量観測、浮遊砂・掃流砂、河床波の観測、洪水前後の河床変動調査を行った。また、直轄管理区間において洪水痕跡調査、航空写真撮影を実施した。本文は、洪水観測の結果と観測に至る迄の準備、観測体制と問題点を整理し報告するものである。 |