境界要素法による港湾内水面の振動解析では、通常、港口を接続部として波動場を港内外に分割して解いている。この場合、港口が直線海岸、あるいは、防波堤開口部を結ぶ線上の仮想海岸にあるとして仮定し、外海側については直線海岸に対する鏡像を考慮して解析をおこなっている。また、沖合に港口がある場合についても同様な手法によって解くことができるが、いずれの場合も直線海岸に関する鏡像を考慮して解析するため、海岸線において入射波は完全反射し、港口に到達する波は入射波とその鏡像である反射波からなる重複波である。実際の砂浜海岸の反射率は無視し得るほど小さいことを考慮すると、港口に到達する波を進行波とした解析による検討も必要と考えられる。この条件は、鏡像を考えない、すなわち、沖合の孤立構造物に対する解析によって近似することができる。そこで、本文では、海岸線を取りはらった仮想の閉領域を考えて解析し、鏡像を用いた解析と比較検討する。また、湾水振動の解析では、通常、共振点あるいはその近傍における振幅増幅率は極端に大きく、ときに非現実的な値となる。Chenは固定境界の反射率および水底の摩擦を考慮することによって共振点近傍における増幅率を大きく低減することができ、合理的な推定が可能なことを示した。こうした境界の反射率を考慮することにより消波岸壁や港内側消波工の有効な配置方法の検討が可能となる。そこで、反射率の効果についての解析例もあわせて紹介する。 |