北海道にある現在活動中の火山として、十勝岳、樽前山、有珠山、駒ヶ岳、雌阿寒岳などが挙げられる。これら火山周辺地域は独特な景観や温泉、自然公園などの豊富な観光資源に恵まれているため、年々観光客が増大しており、また、これを受け入れる観光施設等の社会資本が蓄積されつつある。いっぽう、火山地域は地球内部エネルギーのはけ口であるため地表変動にともない脆弱な地質が広く分布しており、また噴火によって不安定土砂が容易に生産される場所である。このように火山地域は土砂災害という面において本来的に非常に危険な要素を持っている。従って火山地域における人口や資産の流入は必然的に災害ポテンシャルを高めることになる。火山地域における土砂災害形態は多様であり、大別すると噴火に伴う一時災害と噴火後の降雨が引き起こす二次災害がある。現在の砂防計画では、この二次災害の中でも土石流や小規模な泥流を対象とするにとどまっており、1985年南米ネバド・デル・ルイス火山で発生したような大規模泥流に対しては、有効な対応策が確立されていない。日本においても大正15年に十勝岳で同じ様な火山泥流災害(大正泥流)が起きており、死者行方不明144名という多くの犠牲者を出している。人口・資産が増大している現在同様な泥流が発生したならば、当時をはるかに上回る被害が予想され、火山泥流に対する具体的な対策を講ずることの必要性は論を待たない。本検討では、火山地域における多様な災害形態に対する砂防計画手法についてこれからの方向を検討し、特に火山泥流について具体的な施設計画の考え方を示した。 |