札幌市南区の石山、藤野地区を中心とする区域は、人口160万人を突破しなおも増大を続ける札幌市における宅地供給の場として急速な開発が進行しており、今後市街化区域に編入が予定されている区域も多い。第3次札幌市長期総合計画によると、"北国にふさわしい良質な住宅ストックの形成"が前面に打ち出され、優れた居住環境の整備が重要な課題として示されている。流路工を主体として実施されている現在の砂防事業は、まさにこうした居住空間の中で展開されており、土砂災害の防止と同等のウエイトで生活環境に融合した"質"を求めていかなければならない。この"質"は日常生活における"快適性"という言葉に置き換えることができると思われるが、これは物質的快適性と精神的快適性からなる。前者は施設そのものが普段の生活においてなんらかの役に立つこと、すなわち利便性であり、後者は住環境としていかに美しいか或いは調和しているかといった視覚に訴えるもの、つまり景観と言う言葉で表現されるものである。利便性については、砂防施設の本来の機能に付加価値を持たせようということから、現在雪対策のために施設を活用する方策を検討しているところであり、景観面についても独創的な修景ブロックを考案しまたフェンスにもアイディアを凝らすなど様々な試みを行っている。現在実施されている流路工施設は、改修以前の河川に比較して大規模なものであるため、従来在った景観を大きく変化させ、また同時に新しいオープンスペースを生み出すことになる。景観面に関する施設計画を考える場合、この従来景観からの変化およびそれに伴って発生するマイナス面を十分把握したうえで取り組まなくてはならない。本研究は、景観計画における上記問題点について考察しながら居住空間における望ましい景観を創出するための施設の在り方について検討を行ったものである。 |