鋼管矢板基礎は、我国で独自に開発されたもので、昭和44年に石狩河口橋の基礎に採用されて以来、大規模橋梁基礎として広く普及した基礎形式である。本基礎は鋼管矢板を仮締切りと兼用できるため工期を短縮でき、また工事占用面積を縮小できることや比較的支持層が深くてもケーソン基礎に匹敵する大きな支持力が得られるなどの多くの利点をもち、特に泥炭性軟弱地盤の多い北海道では、有効な工法といえる。反面、設計・施工面での留意点も多い。特に施工面では設計支持層への鋼管矢板の貫入が本基礎を成立させるための重要な要素となるが、基礎が閉鎖形状の大規模なものとなるため載荷試験による支持力確認が困難なことや打込み時の継手管の影響などから単独杭の動力学公式の適用性について不明な点もあり、鋼管矢板の打止め判定が難しい問題となっている。一般に鋼管矢板は単独鋼管杭に比べ打込みが困難になる傾向にあり、場合によっては中堀り工法などの特殊な対策を必要とした例も少なくない。このため、本報では北海道で近年施工された鋼管矢板基礎4現場を対象として、各現場の施工管理記録をもとに鋼管矢板の先打ち杭と後打ち杭および単独鋼管杭との打込み特性の比較、打撃試験を含めた継手管の影響などに注目した整理を行い、鋼管矢板の適切な鉛直支持力評価について検討を加えた。 |