港湾開発がもたらす様々な経済効果の中に物流の効率化によるコストの軽減効果がある。新規港湾が完成したり、既設港湾の施設能力が増大すると、港湾背後の物流パターンは変化し、物流コストは軽減する。今回の研究では逆に、もし北海道のある既設の港湾の機能が低く、ほとんど存在しなくなったら、物流パターンと物流コストがどのように変化するかを、北海道開発局が開発した効率的な港湾貨物流動を求める数理モデル(港湾物流最適化モデル)を用いて解析し、全道における物流パターンと物流コストを検討して、現況との比較から港湾整備による経済効果を分析する。なお昭和60年における物流パターンは、昭和53年10月の陸上出入貨物調査の結果(最新の物流パターン)を利用し作成したもので、調査対象(縮小対象)を道東圏の物流拠点となっている釧路港の公共岸壁とし、縮小時期としては昭和60年としている。本研究では、道内各地域のポテンシャルや道内各港湾(重要港湾以上)の港湾施設量を制約条件として、各品目別に貨物の生産量と集中量を配分し、貨物パターンの変化とそれに伴う物流コストを全道的に求めている。ただし結果は、港湾背後圏の分析ということで、港湾⇔地域間の貨物の物流を求めたものであり、北海道に出入りする貨物がどの港湾を利用したらコストが低いかという検討は行なっていない。また、一般貨物はできるだけ陸送距離を小さくし、ロットの大きい運賃単位の安い海上輸送を利用しようとする性格が大きいため、あるていど合理的な流動形態を求められるが、フェリー貨物は方向指向性が強くかつ商業的要因が大きいという理由から除いている。さらに、実際にはフェリー貨物以外でも方向指向性や商業的要因の高いものや、その他いろいろな要因で貨物は流動しているということを、本モデルによる結果を検討するうえでは十分念頭において行なう必要がある。 |