ある実河道にある流量が流れた場合を想定し、その水面形を計算によって正確に知る事は難しいものである。何故なら、河道の立体的形状や河床表面の状態などが極めて複雑なためである。そこで、模型実験を行うという方法が用いられ、これによってかなり良い精度で実河道における水面形を知る事が可能となる。しかし、実験には時間を要するので、即座に水面形を知るには、多少精度は落ちても、計算にたよるしかないであろう。その場合、計算方法はシンプルである程、扱い易い。我々が日常頻繁に行なっている不等流計算がまさにこれである。しかしながら、例えば、石狩川現況断面を用いた計算では、所々、計算水位に急な逆勾配が生じ、この現象は石狩川下流部(KP0/0~0/6)において顕著に見られる。この区間の河道形状は、断面の急拡、急縮あるいは彎曲部等の変化に富み、実際の物理現象として局所的に逆勾配が生ずる可能性は十分存在する。しかし、実河道における洪水の痕跡水位と、その再現計算水位を比較すると、断面形状の変化が激しい区間では、計算水位形状は、なめらかに欠け凹凸が激しく、不自然な程急な逆勾配が生じることがあるように思われる。そこで、本検討では、問題を急拡部における水位の逆転に絞り、不等流計算手法の改良によって、計算水位の精度を向上させることを試みた。具体的には、従来、速度分布によるエネルギー補正係数αを一定値(α=1.1)に固定している点を改め、αを断面毎に変化させ得るものと考えて、検討を行った。尚、新手法の実験的検証が今後の課題として残されている意味で、本検討は中間報告である。 |