移動床流れにおける流体抵抗は、河川工学における古くからの基本的な問題の一つとして、今世紀の初頭以来多くの実験、研究が積み重ねられてきた。しかし、実際河川においては、流れと流路境界の相互作用が流路の幾何学的形状を造り、流れに対する流路の抵抗を想定するという複雑なメカニズムの故に、今だその流体抵抗を把握するということは困難な問題である。一般に流路の幾何学的特性には水理効果の異る2種類のものがある。一つは直線流路、蛇行流路、網状流路などの流路の平面的な形状で、これは砂洲(sand bars)の存在と密接な関係な関連を持っている。砂洲は流れと流路境界の間の相互干渉のスケールの点から中規模河床形態と呼ばれる。他の一つは小規模河床形態と呼ばれる水路床の起伏で、砂漣(sand rippls)、砂堆(sand dunes)、遷移(tvansitions beds)、平坦(flat bed)、反砂堆(antidunes)等に分類される。本研究では小規模河床形態に着目し、多くの実験室の資料から導びき出された岸・黒木による「移動床における流体抵抗」の理論(昭和47年)と、実際河川(ここでは旭建管内の比較的急流河川)の流量観測の資料とを比較し、実際河川の抵抗予測がどの程度可能かを検討したものである。 |