従来砂防事業は、土砂の崩壊、流出、氾濫堆積といった現象から生じるさまざまな災害が発生した後に、その手当として行われてきた。その為、砂防事業の効果については災害の主要因たる土砂の移動に主眼が注がれ、これをいかにくい止め無害化するかといった土砂処理を中心に論ぜられてきた。その効果量は、対象土砂を低減した割合:土砂整備率で表わざれている。一方 土砂の低減により基盤整備がなされる事の社会経済に与える影響として、住宅被害、農地被害の軽減、土地利用の高度化促進等きまざまな効果が考えられる。特に市街化の著しい地域で砂防事業が行われる場合、土砂整備率と同様に砂防事業の社会経済効果が評価されるべきであるが、現在のところ確率した手法が無く、定量的に扱う事のできない部分もある。本研究は豊平川上流砂防区域の中で特に市街化の著しい都布砂防区域(後述)について社会経済効果を検討したものである。検討にあたって「石狩川治水経済調査」を参考とし、本年度調査を行った都市砂防渓流の資産分布調査をもとにして被害額を検討した。また、現在検討中の豊平川砂防基本計画で考えている事業費を用いて、現況及び基本計画完了時の便益比も算出してみた。さらに 参考として広域砂防という観点で、砂防基準点より下流に流下する土砂量を流量の増加とみなし、超過土砂量が下流に与える流量増分の被害を検討してみた。 |