貯留関数法が洪水流出解析に広く用いられている理由として、次の特徴があげられよう。すなわち、(a)集中定数系モデルを代表する1つであり、流出現象の非線形性を比較的単純な構造式で表現できる。(b)洪水予報や洪水時のダム操作のための流出逐次予測(operational forecast)に要求される計算の簡便さと迅速さをかね備えもっている。その反面、従来から提案されている貯留関数法の問題点を列挙すれば、(a)モデルパラメータと流出特性を規定する斜面長、勾配、等価粗度係数などの流域特性値ならびに降雨特性値との相互関係が定量化されているとは言いがたい。このため、流量資料が完備していない小流域におけるハイドログラフの推定に貯留関数法が有効に利用されていない。(b)モデルパラメータと流域特性値および降雨特性値との定量的相互関係をはかろうとすれば、降雨・流量資料が完備している多数の流域において、数学的最適化手法を駆使してモデルパラメータの同定が必要となる。しかしながら、現状ではモデルパラメータの同定が試行錯誤的に行われているきらいがある。本報告では、以上述べた貯留関数法の問題点を解決すべく、まず、貯留量~流量曲線の2価性を表現する構造式としてどのような型式が適当であるかを述べる。次に、貯留関数モデルパラメータの最適化手法を詳述し、最後に、その適用例を示す。 |