水路の流水抵抗を評価する尺度として粗度係数は、水理計算における重要な基本値の1つである。しかし、粗度係数は、水路床面の表面摩擦抵抗だけでなく、床面の不規則性による形状抵抗、流水を一次元的に取扱うための運動量やエネルギーの補正、水路断面形状の影響など不明確な要素を背負い込む結果になっている。また、特に河床の変動を伴う自然河川では、このような不明確な要素がからみ合うため、粗度係数の値は複雑忙変化し、水理計算を行うための推定は困難なものとなっている。粗度係数の妥当性を確かめるうえで、また、資料の少ない河川の粗度係数を推定するうえで、河床材料は、最も大きな指標の1つである。しかし、河川の粗度を河床面の摩擦抵抗だけとらえ、粗度係数を河床材料から推定した場合、実河川では、実際のものよりも、低い値となることが多い。すなわち、上述したように、実河川において粗度係数を推定する場合、河床表面にできた河床波や、河川の湾曲等による幾何形状による抵抗をも含んだ形で行う必要がある。河道計画を立案するうえで、最も重要となるのは洪水時における流況の予測である。この場合、粗度係数の推定のために、河川の平面形状は容易に知ることができるが、洪水時の河床形態を把握することは非常に困難なものとなっている。本報告では、石狩川を例にとり、昭和56年8月上旬洪水における航測データと流量観測データをも.とに、高水敷粗度、低水路粗度を求め、高水敷については、地被状態との関係を調べ、また低水路については、各種粗度係数の推定式との比較をし、洪水時の河床形態について検討を行う。 |