漁川ダムは昭和55年、千歳川流域の洪水調節と道央圏の中核都市として人口増加の著しい4市(恵庭市、北広島、千歳市、江別市)の水需要に対処する目的で建設された。しかし、昭和56年、水道利用者よりカビ臭の苦情が初めて寄せられてからほぼ毎年小規模なカビ臭の発生が起きていたが、平成5年に大規模なカビ臭が発生し、百件を越す苦情が殺到した。そのため、地元、恵庭市からその防止対策についてダム管理者に強い要請がなされた。この要請を受けて平成13年度に貯水池水質保全事業を立ち上げ、その水質改善策を講じるため、カビ臭の発生原因とその防止方法について検討を進めてきた。その結果、カビ臭の発生の原因が貯水池内に流入してくる土砂の蓄積に起因し、その堆積土の形状が、カビ臭の元である放線菌の増殖に関与していることが突き止められた。増殖した放線菌は生育過程で体内にカビ臭の原因成分となるジオスミンを生成し、さらに貯水池の深層部に流送されるため、無酸素状態に近い嫌気層で死滅する。この放線菌の死滅によって細胞破壊が生じてジオスミンは水中に放出され、貯留水に拡散されて放流される。これが水道水源として供給されるためカビ臭をもたらすものと考えられる。漁川ダムのカビ臭の発生原因が、以上のようなメカニズムによって起こっているものと考えられ、これまでに解明した成果について報告する。 |