我が国の海岸線や山岳部の道路には、落石に対する防護施設として落石覆道が設置されている。落石覆道の頂版上面には、落石衝撃力に対する緩衝工として, 従来より敷砂が用いられてきた。北海道開発土木研究所と室蘭工業大学では、敷砂材に替わる新たな緩衝工として優れた緩衝効果を有する三層緩衝構造を開発している。三層緩衝構造とは、表層材に維持管理が容易な敷砂、芯材に荷重分散効果が期待できるRC床版、裏層材に軽量で衝撃吸収性能に優れるEPS材を組み合わせたものである。北海道開発局札幌開発建設部では、一般国道231号に設置されているRC製 落石覆道の補強対策として三層緩衝構造の採用を計画しているが、この際に他工区で仮設用緩衝材として使用したEPS材を三層緩衝構造の裏層材として再利用可能かどうかを検討することとなった。この仮設用EPS材は、近接する岩盤切土工事において工事の安全性確保のために使用されていたものであり、切り取った岩盤や土砂、作業重機などの荷重を受けて正規規格品に対し若干圧縮変形を生じている。これらのEPS材は多量にあり、再利用が可能であれば、産業廃棄物の発生量を抑制することができるとともに、大幅なコスト縮減につながるものと考えられる。本報告では、荷重を受け変形したESP材の三層緩衝構造への再利用の可能性について検討を行うものである。検討方法は、静載荷実験により使用済みEPS 材の応力-ひずみ関係を未使用のEPS 材と比較する形で行うものである。さらに、三層緩衝構造に再利用した場合について重錘落下衝撃実験を実施し、その緩衝性能および荷重分散効果を既往の研究成果)と比較検討するとともに、三層緩衝構造の衝撃力算定式に基づいて設計外力となる伝達衝撃力の検討を行った。 |