港湾や漁港内においては、船舶が安全に停泊するため係留施設ばかりでなく、進入波を低減させるため、外郭施設などの整備を行ってきた。整備が進捗するにつれ、港内の静穏度が向上し、船舶の停泊の安全性は高まった一方で、港奥部の閉鎖性域では、水質悪化や港内結氷等が問題となってきた。こうした問題への対策としては、水質改善には清浄で、また結氷防止には港内水より高い温度の外海水等の導入が考えられる。この場合、外海水の導入を行うための外力として波浪や潮汐などの自然力のみでは所要の交換量が得られない場合、一般的には商用電源を用いたポンプ動力を利用することとなるが、ランニングコストが増大するといった課題があり、実用化に向けては低ランニングコスト型の海水交換システムの開発が望まれている。このため、著者らは今まで要請は高いものの高ランニングコストであるため断念されてきた動力利用型の海水交換を持続的利用が可能な再生可能エネルギーを利用することで低ランニングコスト化し、環境保全を図りつつ、新たな環境負荷を発生させない海水交換手法の開発を目指すこととした。本報告では、汲み上げ型の海水交換装置を試作し、装置の性能・特性を室内実験により得た結果概要と、実験結果により得られた知見を元に装置を改良し、実験を新たに行っているところでありその内容について報告する。 |