一般的には、当該構造の建設コストを指標として、その大小によって構造形式を決定する。建設期間を短縮し早期供用によって投資効果を最大にする構造形式を採択する方法も行われている。環境が重要視される近年においては、構造物のライフサイクルを考慮しその間に発生する環境負荷としてCO2やNO xの排出量などを指標として、それを貨幣換算したりポイントに置き換え、その総合計によって採択する構造物を決定する方法も開発されている。しかし総合的な視点から、採択する構造物を評価する方法として、上記の方法は一面的であったり、1指標に換算するにあたって種々の仮定を設けることになり論理性を低下させる要因を包含している。本論文では、上記の欠点をできるだけ避け、総合的に構造物を評価する方法として性能照査設計に用いる照査指標を評価指標として用いる方法を提案する。その場合、特に近年重視されてきた環境をどのように評価体系に組み込むかが重要である。最近の設計法の動向として、許容応力度法および仕様によって構造断面を決定する手法から、構造物への要求を具体的に設定しそれに対応する性能項目および照査基準を設定してこれを満足するように設計する性能照査型設計に移行しつつある。その最も特徴的な点は、構造物に要求される性能(要求性能)を明確にするとともに、これまで別々に扱われてきた構造設計、材料、施工および維持管理を総合的に扱い、相互にフィードバックを可能にすることにある。構造物の評価に性能照査型設計と共通の照査指標を用いることは、構造物の計画・設計と評価が共通の理念と手法によって体系的に行われることを意味する。本論文においては港湾構造物を対象としているが、照査指標を適切に選択することにより土木構造物全体に適用可能である。 |