北海道では野生動物との交通事故が発生しており、交通安全上の課題の一つとなっている。特に道東地域ではエゾシカとの交通事故が比較的多く発生している。これらの事故は野生動物の生命を奪うだけでなく、特にエゾシカなどの比較的大型のほ乳類の場合では人間にまで被害を及ぼすこともある。そのため、道内ではエゾシカとの交通事故に対し色々な対策が講じられ効果を発揮している。基本的な対応策としてはエゾシカを対象としたものとドライバーに対するものとがあり、エゾシカを対象としたものは、アンダーパスやオーバーブリッジとフェンスによりエゾシカを横断通路へ導く方法とフェンスやテキサスゲート、ワンウェイゲートなどにより道路上への侵入を制限する方法などがある。一方、ドライバーに対しては注意看板の設置やエゾシカについてのパンフレット配布など情報提供によりドライバー自身に危険を回避してもらう方法である。本研究はドライバーに対しエゾシカ出現による危険情報をより一層適切に提供することを最終の目的とし、ITS技術を活用した情報提供システムの検討を行うものである。このシステムの検討にあたってはその前段として、エゾシカの道路上ならびに道路近傍での行動を把握する必要がある。本論文では、エゾシカとの交通事故が比較的多く発生している一般国道44号の別寒辺牛湿原周辺においてエゾシカの行動を監視カメラ及び現地巡回観察によって調査し、データを収集・解析することにより行動パターンの把握を試み、その結果として、エゾシカの行動特性の一端を捉えることができたので報告する。 |