わが国には急峻な地形が多く、そのような所を通る道路に隣接するのり面や自然斜面の安定を図る必要がある。この対策としてさまざまなのり面工・斜面安定工に関する技術が開発されており、それら技術のひとつにモルタル・コンクリート吹付け工がある。この工法は、のり面・斜面の浸食や風化を防止し、小規模な落石や剥離を抑止することを目的としており、型枠を用いず広い範囲に比較的厚さの薄いモルタルやコンクリートを施工する方法である。しかしながら、吹き付けられたモルタルやコンクリートが劣化し、小剥離してしまうといった事例も見られることから、これを抑止する方法が求められている。コンクリートの小剥離には様々な要因があるが、このうちコンクリートが脆性的に破壊してしまう特性が原因となることがある。このような弱点を材料的に補うために繊維補強コンクリートの吹付けコンクリートへの適用が図られてきている。繊維補強コンクリートは、普通コンクリートに比べて引張強度や曲げ強度が高く、靱性が大きいため、ひび割れ発生後も無補強のコンクリートと比べて大きな耐荷力を有しているのが特徴である。現在では、コンクリートの靱性改善、ひび割れ幅の拡大抑制、コンクリート片の剥離・剥落防止等、コンクリートの種々の性能を改善する目的で広く使用されており、繊維素材の種類も、鋼、ガラス、炭素、ビニロン、ポリプロピレン等、多くの繊維が開発されている。これら繊維のうち、鋼繊維は、1973年頃から使用されているため、技術開発や研究は他の繊維よりも進んでおり、現在までもっとも多く使用されている繊維といえる。しかし、鋼繊維は、①密度が7.9g/cm3と大きいため単位容積質量が大きくなる、②表層部の繊維が腐食し外観を壊してしまう、といった短所を有している。そこで筆者らは、鋼繊維よりも密度が小さく、錆びない素材であるポリプロピレン繊維に着目し、ポリプロピレン繊維を混入した、のり面防護用吹付けコンクリートの圧縮強度や凍結融解抵抗性に関する検討を行った。 |