道路や各種開発地の法面は、これまで外国産牧草種子の吹付けによる急速緑化が行われてきたが、近年は景観上の違和感や周辺環境との不調和が指摘されている。また、貧栄養土壌の緑化施工地では、吹付けで導入された牧草が数年で施工時の肥料を消費してしまい、衰退している場所も見られる。そのため、道路法面や各種開発行為で発生した人為的裸地斜面に対する緑化は、外国産牧草から、より永続性があり、多様な景観を創出する郷土種の木本が求められるようになってきた。木本の導入に当たっては、多くの木本は発芽後の初期成長が遅いため、降雨等による斜面の初期侵食防止を目的に、草本と混播されることが多い。しかし、木本と草本を混播すると、初期成長量が大きい草本が先行して繁茂するため、多くの木本は被圧されて生育できない。そのため草本と木本の混播には、ハギ類のように初期成長量が大きくて草本に被圧されない木本を使用するか、侵食が発生しない範囲で草本播種量を少なくする必要がある。しかし、混播にハギ類を使用した場合、地表面地近くから枝葉が密に繁茂するため、周辺植生の自然侵入が阻止され、植生遷移が進まない結果、周囲の自然環境とは景観的に違和感が生じることが多い。また、木本の初期成長を被圧しない草本播種量は、草本成立本数が少なく、大雨等の気象条件では法面が侵食される可能性もある。本研究では、これらの矛盾と課題を解決するために、1度の播種(施工)で、播種1年目は草本を繁茂させて初期の侵食を防止し、翌年に多種多様な木本を成立させることを目的に、休眠性木本種子(播種した年は休眠して発芽せずに翌年になって発芽・成長する)と、一年生草本種子を組み合わせる新しい混播試験を試みた。試験の結果、実用化への指針を得ることができたので、その結果について報告する。 |