国営畑地帯総合土地改良パイロット事業「小清水地区」の対象地域である斜網地域は、かんがい期(4月~8月)の降水量が300mm程度と非常に少ない。とくに5月~7月の播種・定植後の初期生育期には干天が連続し、大規模畑作の生産性を不安定性なものとしている。そこで「小清水地区」は、当該地域の農業の生産性の向上と経営の安定化を図るために畑地かんがいを中心とした事業を実施し、順次かんがい諸施設の供用が進められているところである。ところで昨今、本地域の基幹作物であるビートや馬鈴薯、麦類等の価格低迷により農家所得が減少傾向にあり、畑作3品主体の土地利用型農業から野菜類を導入した複合的な畑作農業への転換が急務となっている。一部の生産者は畑地かんがいの導入を契機に、ビートやタマネギ等の育苗ハウスを利用した集約的な施設農業の展開を始めている。施設農業は収益性が高い反面、大規模畑作と両立させるためには栽培管理に加えて水管理や労力管理における負担が著しく大きい。畑作専業地帯に施設農業を導入して経営の安定化を図るためには、施設農業に伴う種々の管理作業の省力化が不可欠である。「小清水地区」では受益農家と共同で、育苗ハウスを利用した施設農業に必要な省力的な水管理技術の確立に関する試験調査を平成10年度より実施してきた。これまで、育苗ハウスの高度利用に際して基盤整備「有材心破」を導入することにより、多量少回数の水管理(マイクロかんがい)が可能になることを報告してきたが、本報告は、「有材心破」施工ハウスを利用した施設農業において、省力型水管理「小清水方式」の考え方とその有効性についてとりまとめたものである。 |