切土のり面は、施工完了時から徐々に脆弱化する傾向にある。特に、本道のような寒冷な気象条件下に曝される場合には、凍結、融解の繰返を受け、土質にもよるが、翌年~数年の経過で崩落するような例も見られる。崩落に至る直接の原因は融雪浸透水や降雨などの『水』であるが、それ以前に受ける凍結・融解で、のり面の表層部が脆弱化しているこ とが、これら崩落に対する抵抗をなくしているものと考えられる。本道では、寒冷な気象によるのり面の脆弱化を避けることは不可能であるが、のり面保護工を設けることによって、影響を緩和したり、外部からの誘因を抑制したりすることは十分に可能であり、のり面、延いては地山の安定を図る上でも、適切な保護対策工法の施設が望まれる。のり面保護工の一工種としてのり枠工が施工されるようになりだしてから、約20年が経過し、当初はコンクリート・ブロックの格子枠であったものが、軽量型鋼製・波形加工鋼板製・プラスチック製などが開発施工され、平面形状も格子形・方格形が主であったのに対し、円形・三角・六角形と多様化してきている。現在、のり面に利用されているのり枠工のうち、吹付方式の枠を除き、プレキャスト製品について調べてみると、当所で資料を収集できたメーカーが40社あり、製品数にすると優に百を超えている。このように多くの製品が、のり面保護工用資材として考案・開発されていることからも、のり面保護工の重要性をうかがうことができるが、施工実績の増加、時間の経過に伴って、のり枠工の変状や崩壊事例が増加していることも事実である。多くの製品が開発され、のり面の保護に効果を発揮することは道路機能を維持していくうえで結構なことであるが、反面、枠工の選定にあたって材質・形状による基準が確立されていないことから、設計にたずさわる現場技術者を苦慮させているのが現状である。本文は、このような背景のもとに、施工後数年を経過し、変状を呈しているのり枠工の実態を調査することによって、原因の究明を行い、現場での選定作業の一助とすべく考察を行ったので、報告するものである。 |