最近の札幌近郊における地下水利用状況は、恵まれた水量と水質により益々増加する傾向にある。特に札幌市内のホテルなど水使用量の多いビルでは、安価なことから水道利用施設を地下水利用施設に改造するところさえ出てきている。しかし乍らこれらの地下水利用による影響は、地下水位の低下として我々の調査でも顕著に現われている。また、地下水位低下に伴う地盤沈下は揚水の集中している都心部が、砂礫層から形成される扇状地のため地盤沈下は小さいが、扇端部にあたる函館本線から北は軟弱地盤が多く大きな沈下を起している。最近の全国的な地盤沈下は鈍化の傾向にあるが、地域によっては著しい所もあり、これらの現状を踏まえて関係大臣による「地盤沈下防止等対策関係閣僚会議」の開催が昭和56年11月に閣議了解され、第1回開催では地盤沈下を防止し、併せて地下水の保全を図るため関係省庁連絡会議が設置されて、地域の実情に応じて総合的な対策を推進することが決定されるなど、地下水に対する関心は除々に高まりつつあるのが現状である。石狩川開発建設部では、河川改修や地域開発に伴う地下水の変動機構の把握、貴重な水資源として適正な利用を計るための基礎資料とすることなどを目的に、地下水に関する調査観測を昭和48年より札幌近郊を中心に実施してきたが、その調査期間も10年近くを迎え膨大な資料の蓄積がなされた。これら資料の1部については、既に年表として建設省に報告し公表されている。本稿では、これらの資萪を統計解析や図表に整理して、調査観測地域の地下水動向について考察した結果を報告するものである。 |