北海道で海岸に建設するコンクリート構造物については、従来、①かぶりコンクリートを大きくする、②単位セメント量を多くする、③密実なコンクリートの打設を心がける、など種々の塩害対策が行なわれてきたが、強い季節風を長期間にわたってうけるという、塩分による腐食環境がきわめて激しいもとでは十分とはいえず、鋼材の腐食が進み、縦ひびわれが発生し、耐荷力の評価や補修工法が問題となる例も多い。コンクリート中の鋼材の防食は、基本的にはコンクリートで行なうべきものと考えられるが、それが不経済だったり、不可能な場合、他の防食工法の併用も検討する必要がある。最近の研究の進歩により、コンクリート中の鋼材腐食のメカニズムが明らかになるのに伴い、防食工法も種々開発提案されるようになってきた。その主なものとして、イ)コンクリート中に塩分を浸透させない工法(防水工、含浸コンクリート、ポリマーセメントコンクリートなど)、ロ)コンクリート中に塩分が入っても鉄筋との接触を防ぐ工法(エポキシ樹脂被覆鉄筋たど)、ハ)腐食を制御する工法(電気防食、亜鉛メッキ鉄筋など)などがあるが、なかでもエポキシ樹脂被覆鉄筋は室内実験曝露試験の結果が極めてよいこと、普通の施工方法ができること、コンクリートにひびわれが発生しても防食能力を失わたいことなどから最近、特に注目されている工法である。エポキシ樹脂被覆鉄筋は、融氷剤によるRC床版の鉄筋防食のためアメリカで開発されたもので、はじめて現場に施工されたのは、1973年である。47種類の高分子材料の試験から、7種類のエポキシ樹脂を選定するなど多くの実験をもとに、米国連邦道路局による仕様書も整備され、その使用量も年間10,000t以上に達するといわれている。日本では、防食性能試験、曝露試験などにより樹脂に対する研究が進む一方、付着強度、RC桁の曲げ試験、重ねつぎ手など実用化に関する研究もさかんであるが、現場に適用した例はない。今回、海岸擁壁にエポキシ樹脂被覆鉄筋を用いて試験工事を行ない、現場における諸問題について調査したので報告する。 |