この地すべりは、道路改良工事として約150m間の現道曲線部分をショートカットし、直線とするべく暫定切土を行った後に発生したものである。この道路改良計画に際して、地形、地質状況から地すべり発生の危険が予測されたので、当初の計画センターを川側に寄せ、切土量を小さくする計画変更を行い、地すべりが発生した場合の対応として、ボーリング、地中ひずみ計の埋設を実施し、地中ひずみ、地下水位の測定を行っていた。不幸にして暫定切土(約27,000m3)完了直後の昭和48年8月21~22日に62mmの降雨があり、翌日の23日に地すべり現象として頂部引張りキレツの発生していることが確認された。地すべりの発生機構の検討と安定解析を行い、地すべり防止対策として集水井による地下水排除工と鋼ぐいによる抑止工との併用工法を採用し、昭和49年に施工した。昭和50年に路盤工を残す計画切土が実施(約25,000m3)された。その後同年の8月22~23日の6号台風がもたらした集中豪雨(168mm)により、集水井(W-1)のセン断破壊と抑止ぐいの大きな変形が生じた。このため昭和51年に抑制工として65,000m3の排土工を増加している。ここでは、地すべりの発生機構、その後の移動機構、集水井および抑止ぐいの変形などから、当地すべりの防止対策を計画する上での問題点を究明し、今後の地すべり防止対策を検討する際の基礎資料とするもので、これらの検討結果について報告する。 |