北海道のオホーツク沿岸は、冷涼な気象条件が制約となってビート、バレイショ、小麦、飼料作物等の耐寒作物の生産が盛んであり、一大畑作地帯を形成している。中でもオホーツグ沿岸西北部に位置する綱走管内西紋地域では、気象、土壌的条件により、たび重なるかんばつ被害に見舞われ、厳しい農業経営をしいられている。この地方は、気象的にみて春は乾燥した西風が吹き又、春から夏にかけて降雨が少なく、加えて特殊土壌の重粘土は保水力に乏しい為、この地方の基幹作物である牧草の生育に著しい障害をもたらしている。近年、経済の高度成長と共に酪農経営の規模拡大が進み、それに伴なう粗飼料生産基盤を農地の拡大に求めていた。しかし、土地資源にも限度があり又、ここ数年繰り返されているかんばつ被害は、地域農家経済に大きた打撃を与え、経営収支を悪化させる一因となっている。こうした現状を見極め、地元では畑地かんがいによる粗飼料生産の安定多収を望む声が高まっている。これらの対策として牧草かんがいの有用性を検討する為、昭和54年度より3ヶ年間、紋別郡雄武町に試験圃場を設置し、各種試験、検討を行って来た結果をとりまとめたものである。折からの畜産物をめぐる諸情勢は、必ずしも楽観的ではないが、本調査で得られた知見は、現状の打開策として、将来的に考えて牧草かんがいがこの地域における経営基盤の確立に寄与するものと考えられた。 |