沙流川総合開発事業は、二風谷ダムおよび平取ダムの2ダム1事業として昭和57年に建設に着手し、平成9年度には二風谷ダムが完成している。平成9年に改正された河川法に基づき、平成11年12月には沙流川水系河川整備基本方針が河川審議会の答申を受けて決定し、平成14年7月には9回に渡る「沙流川流域委員会」の審議を経て「沙流川水系河川整備計画」が策定された。このなかで、二風谷ダムおよび河川の改修計画と併せて、沙流川流域の治水対策として平取ダムが盛り込まれた。一方、沙流川流域は古来からアイヌの人々が居住し、特色ある民族文化を育んできた地域である。とくに平取ダムが建設される平取町は、住民の人口構成に占めるアイヌの人々の割合が高く、アイヌの精神文化、物質文化を伝承する人々を数多く輩出し、豊かで多彩な沙流川流域の自然と相まって、アイヌの伝統文化が比較的濃厚に保存、継承されてきた地域である。さらに平成9年に制定された「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」に関連してアイヌ文化の保存、継承、発展に向けた取り組みが進められている。また、平成9年に判決が出された「二風谷ダム裁判」の判決の理由では、アイヌ民族の文化的享有権などの価値を判断するための調査を行うべきであったとされており、このような経緯、背景を受けて、平取ダム及び関連施設の整備計画が、アイヌの文化的所産に与える影響について調査、検討をすることとなった。本報告では、主に調査を行うに至る背景および調査計画の概要について述べるとともに、今年度の調査結果について報告するものである。 |