美瑛川流域は源頭部に活火山である十勝岳をもつ、流域面積93km2の一級河川である。大正15年には十勝岳の火山噴火に伴い発生した融雪型火山泥流が美瑛川と富良野川を流下し美瑛町や上富良野町が被害を受けている。そのような背景のもと平成元年に十勝岳火山泥流対策基本計画が策定され、ソフト対策とハード対策の両面からの総合的な火山泥流対策が進められている。この計画に基づき美瑛川第5~8号砂防えん堤が平成13年から施工され、平成15年度にこれらの施設が完成し、融雪型火山泥流に対して下流の安全が確保されつつある。一方で近年、環境負荷の低減や低コストを目的として、現地発生土砂とセメントを混合して構築するINSEM工法(砂防ソイルセメント工法)が全国的に活用されてきている。雲仙普賢岳の水無川1号砂防えん堤などでは、現地に多くの土砂があり、火山噴火に伴う土砂移動現象に対する砂防施設の規模が大きいことから、同工法が積極的に活用されている。美瑛川においてもコスト縮減や工期短縮を目的として、美瑛川5~8号えん堤の左岸袖部において、INSEM工法を適用した。本報は、当現場でINSEM工法を採用した経緯、試験、設計、施工について報告する。 |