近年河道内における土砂の侵食・堆積作用に伴う洪水流下能力の変化、上・下流における土砂収支等の課題が指摘され、河川管理において流域一貫した土砂管理の重要性が指摘されている.河川において土粒子の移動は特に増水時に顕著に生じ下流域へと供給されることから、各地において洪水時の物質輸送に関する現地調査が実施されてきている。北海道開発土木研究所では、中流域にダム湖の存在する北海道の一級河川である沙流川において洪水時の調査を実施し、中下流域のSSや栄養塩類の挙動について把握を行ってきている。その中で2003年8月9日深夜から10日未明にかけて,台風10号の接近に伴う豪雨により洪水ピーク時の水位が計画高水位を上回る既往最大の洪水が発生した。この洪水についても、観測途中において水位上昇等の理由により観測続行不可能な状況となり全洪水期間にわたっての観測はできなかったものの、洪水の立上り部および洪水減衰期後半について、流量観測・採水を実施した。さらに採水された試料についての水質分析および洪水前後でのダム湖底質変化の状況を把握するため、ダム湖底質土砂の採取および採取した試料について底質分析を行った。本報告はこの2003年8月9日から8月11日の洪水期間中に観測された洪水について、すでに結果の整理されている流量・SS濃度の観測結果および、ダム湖底質調査結果を用いてSSの洪水中の挙動に関する検討を行った結果を報告するものである。 |