追直漁港は、内浦湾の東端に位置し、室蘭市の中心市街地に近接した第3種漁港であり、広域漁船集結基地として近隣周辺の中核漁港としての役割を担ってきた。しかし、200海里経済水域の定着、漁業資源の枯渇など漁業環境の変化に伴い、ホタテやクロソイの養殖・中間育成など「つくり育てる漁業」への転換と、都市立地型漁港としての「ふれあい漁港づくり」を目指し、水産業を核とした追直漁港地域整備構想(Mランド構想)が平成4年に室蘭市によって策定された。本構想の主要をなす養殖支援基地(Mランド)整備計画では、海岸線の保全や生態系(既存生物)に配慮した環境保全と、Mランドの背後静穏水面の高度利用を可能とさせる漁港施設建設を目指し、沖合人工島による整備が進められ、平成13年度に人工島の外郭が概ね完成した。Mランドの建設にあたっては、実施に先立ち、海底地形、波浪・潮流、水・底質、水性生物等について事前調査を行い、その結果を受けて学識経験者・有識者を交えた検討会での議論を踏まえ、人工島建設による影響・変化予測及びその解析を実施し、平成7年度に人工島建設に着手した。その後も工事の進捗に応じたモニタリング調査を実施し、人工島建設による周辺への影響について再検討・再評価を行ってきた。本報文は、自然環境に配慮した漁港づくりの要請が高まる中、その具体的手法が確立されていないため、その事例の一つとして追直漁港建設における自然環境の保全に関する計画・調査・検討方法等について報告するものである。 |