本道における漁業生産量は、減少傾向にあるものの全国の約26%、生産金額で約17%を占めている。最近では、生産量、生産額の占める割合が遠洋、沖合漁業から沿岸漁業へ移行する傾向にある。このことから、沿岸漁業の生産性を維持する目的として、栽培漁業に対する依存度は年々高まっており、サケ・マスふ化放流、ホタテガイの地まき放流や養殖、コンブ養殖、ウニやアワビの種苗放流や養殖など『つくり育てる漁業』により、成果を収めている。近年いくつかの漁港において、漁港整備の進展により防波堤背後の静穏水域を中間育成や蓄養殖等のつくり育てる場として多面的利用が進んでいる。また、今後の漁港整備計画においては、地域の漁業振興策として、地元要望等により蓄養殖施設を予定している漁港が少なくない。しかしながら、蓄養施設の計画・設計にあたっては、これまでの外郭・係留施設の整備とは異なり、対象生物の生息環境をはじめ、漁業の実態や漁業者の意向、市場の流通など広範な把握・検討が必要である。本報告は、ウニ・アワビ等の植食性動物を対象として、漁業者自ら静穏域を活用し取り組んできた実態を把握し、蓄養施設の支援方策として、蓄養殖の現状と課題について述べる。 |