十勝地域に代表される大規模畑作地域の農業用排水路の多くは、かつては自然に近い状態にあった小河川に対して、断面拡幅、河床掘削、蛇行の直線化等の工事を行うことにより、地域の基幹的排水路としての機能を確保してきた。こうして整備された農業用排水路である河川は、その後の時間の経過とともに二次的な自然環境を形成していった。国営土地改良事業「南帯広地区」の幹線排水路4条も、このように過去に農業用排水路として改修された河川であり、この改修後、地域の農業は大規模畑作経営を中心に大きく発展するとともに、ながいも等の新規作物の導入・定着が進み、農業経営は大きく変化していった。これに伴い、従前の排水路の機能は、集水区域の流出形態の変化やながいも作付に伴う暗渠深埋設に対応できなくなり、再度の排水路整備が必要となったものである。しかし、幹線排水路も既に二次的な河川の自然環境が形成されていたことから、排水路の整備にあたっては、現況の自然環境との調和に配慮することが不可欠となった。このため、こうした排水路整備の経緯を踏まえ、排水路工事の施行に先立ち現況の自然環境の状況を把握し、配慮すべき事項の検討を行い、排水路の設計・施行上の各種の工夫を実施してきた。本報告は、自然環境との調和に配慮した排水路整備のための調査・検討・設計・施工について紹介すると伴に、現時点における評価を試みるものである。 |