近年、国家財政赤字下で公共投資は厳しい環境にあり、治水投資もその例外ではない。国民の生命と生活を洪水被害から守るための治水投資を財政再建の見地のみから抑制することは、日本の将来に大きな禍根を残すことになりかねない。治水投資の経済効果としては、1)治水投資により形成されだ社会資本ストックが洪水被害を軽減する直接効果(ストック効果)2)民生の安定、ダメージ・ポテンシャルの減少等により受益地の経済活動が増大する間接効果3)冶水投資の実施が総需要に及ぼす需要効果(フロー効果)が考えられる。この内、直接効果は治水経済調査により評価されてきだが、間接効果と需要効果の調査分析手法は確立されていない。本研究は下記の検討を行なうことにより、治水投資の諸効果を客観的、総合的、定量的に把握し今日の赤字財政下、低経済成長下での望ましい治水投資のあり方を模策することを目的とする。a)洪水被害の現況を把握し、治水投資の直接効果について検討する。b)札幌市東区において治水に対する住民意識のアンケート調査を実施することにより、治水投資の間接効果について検討する。c)当部事業費の内訳を調査すること、および公共投資と他の経済政策を比較することにより、冶水投資のフロー効果について検討する。 |