従来、浚渫土砂は埋立などに用いられる一部を除いて、そのほとんどが港湾の近海に沖捨てされてきた。しかしながら、近年、海洋環境の保全及び二百海浬漁業専管水域が世界各国で設定されるなどの社会情勢、国際情勢の変化にともない、必然的に我国の沿岸漁業資源の保護、育成の気運が急速に盛上ってきた。このため、浚渫土砂の海洋投棄は現在きわめて困難な状況となっており、陸上処理が増大してきている実情であるが、浚渫船による二段掘りと呼ばれる不経済な方法で行われており、更には、近い将来、すべての浚渫土砂の海洋投棄ができなくなる厳しい事態も予測されている。このような現状においても、浚渫工事は港湾の機能を円滑に発揮する上で必要不可欠であり、このため揚土式土運船を開発すべく、昭和55年度を初年度に試験を実施した。昭和58年度は昭和57年度までの模型実験の結果を基に、当局所有の既設の土運船(180m3積、底開式)を改造し、その上に昭和57年度に製作した実物大の揚土装置模型を搭載し、船舶としての安全性、作業性を検討する船体諸試験と、揚土装置の掘削方法及び揚土能力などを検討する現場実験を実際の浚渫土砂を使用して海上において行ったので報告する。 |