土砂災害における土砂の主体は、がけ崩れ・山崩れなどの一次生産土砂と、すでに崩壊等によって渓床に堆積している渓床堆積土砂の移動すなわち二次生産によるものとがある。このうち、渓床堆積土砂の移動は、土石流に代表されるように、その規模も大きなものがあり、下流河川に与える影響も大きい。豊平川流域においても、渓床堆積土砂量は非常に多く、下流河川に対するポテンシャルは高い。特に薄別川流域の各渓流には、多量の堆積土砂が分布し、移動頻度も高い。昭和56年8月の降雨に際しても、全川にわたって移動痕跡を残したほか、過去の土砂移動痕跡も渓床堆積地として広く分布している。堆積土砂の移動過程に関する調査方法には、渓床変動を測定する方法があるが、移動規模と頻度(確率)について時系列的に特性を把握するまでには長年月の観測を要する。新谷らは、堆積調査から流域特性を抽出するに際して、木本群落の樹齢調査が有用であるとしている。また清水らは、渓床堆積地上の植生から得た時間的情報により、土砂移動の規模や移動のし易さに関しての特性を解析している。今回、豊平川流域薄別川において、上記の手法を用いた渓床堆積土砂の調査を行ない、堆積土砂の位置・量・移動規模および各流域の土砂移動特性を把握した。移動土砂の分布・移動のし易さ(頻度)を明確にすることは、砂防施設の効果的な配置計画にとって、極めて有用であり、また施設配置による土砂移動特性のコントロールに対する可能性を検討するうえで貴重な資料となるものである。 |