漏水に関する諸問題を全国的に見ると、昭和51年9月における長良川の漏水による破堤を契機に建設省は全国の直轄河川の堤防総点検を行い、漏水等の堤防災害危険ヶ所の実態調査を行った。また、昭和56年8月利根川の洪水では、支川小貝川における樋門周辺の漏水とみられる決壊など、一級河川の直轄管理区間における災害として世論の注目を集めたところである。一方、北海道においては、石狩川流域の礫質および火山灰地帯、十勝川流域の礫質地帯を主として昭和30年代より各種の調査研究を実施してきたところであるが、昭和50年8月、昭和56年8月と2度にわたり、石狩川をはじめとする全道の河川で未曾有の大災害が発生し、各地で大災害を蒙った。この被災のなかで、河川施設災害をみると、漏水に起因すると思われるノリ面崩壊や決壊などの堤防被害および樋門等構造物周辺の漏水被害等が確認された。漏水被害は、治水の整備に伴って、堤防等の河川施設に大きな外力を負担させることになり、増々増加する傾向にあると考えられる。また、堤防を築造する経過からも、堤防は不均質であり、堤防安全度の上からも大きな問題を内包しているものと言え、今後、治水事業を促進し治水安全度を向上させるために漏水対策は、重要な役割を担うものである。これらの背景を踏まえ、本調査研究は、漏水対策について一貫した体系を検討し治水事業の基本を資するものである。 |