昭和56年8月の大雨は、全道各地に洪水災害を引き起こしたが、同時に河川管理者にも多くの検討事項を残す結果となった。とりわけ洪水予測については体制、結果、精度ともに不満足のまま終わってしまった。それを契機に開発局河川管理課が中心となって「洪水予知研究会」が組織され、洪水予測に関する諸問題を検討することになった。その中で提起された最終目標は、以下のようである。1.洪水予測流域毎の時間雨量の予想2.洪水予測地点のハイドログラフの予測及びそのシステム化3.ピーク水位を少なくとも6時間前に±20cmの制度で予測本報文では、この会議で論議された内容をふまえ、この目標に少しでも近づけるように、洪水予測の精度向上を検討したものである。本報文の構成は3部から成っており、まず、従来のカルマンフィルター理論を用いた洪水予測手法に有効雨量的な考えを導入し、基本式の改良を提案して実降雨を予想降雨として与えて改良式の精度を検討している。次に、降雨の予想について実対応時に洪水予測担当者の判断を必要としないような簡易な新手法を提案し制度を検討している。最後に、これら2つの手法を組み合わせることによって本手法が実用にたえ得る精度で予測できるかどうかを検討している。 |