消波ブロック被覆堤は、堤体前面の消波工で来襲する波を強制的に砕波させてそのエネルギーを吸収する構造をもつ防波堤の一様式である。水理機構が複雑なうえ歴史の浅いこともあって、当該様式防波堤設計上不都合な点や未解決事項が多々見受けられる。局の港湾工事研究会でも当該様式防波堤についての問題点について議論されてきたところである。このような経緯から前報では未解決事項のうち主要なもの、すなわち消波ブロック所要重量算定のためのハドソン式の適用性、消波ブロックの部材強度、消波工の天端幅、直立部に作用する波力とその安定計算法、洗掘防止法、斜め入射波による直立部とブロックの安定計算法、隅角部・堤頭部の処理法、等に関して現状での取扱いと過去における研究実績を紹介した。また、直立部の安定計算法に関しては、現設計法すなわち混成堤の波圧式に低減率λを導入した準用式を用いる安定計算法の問題点を指摘したoさらに島田らが示した考え方、すなわち直立部に作用する全水平力Fをブロック間隙からの流体力F1、ブロックを介して作用する流体力F2、ブロック自体の自重による力F3 、に分離する考え方をもとに竹田が設計法として提案したが、その後の滑動実験でのデータの積重ねの結果さらに検討の余地があることを指摘した。これをふまえて本年度は、直立部に作用する全水平力FをF1+F2+F3に分離する考え方にもとづき、その作用形態を解明するために、①直立部に作用するブロック圧力(F3)、②直立部に作用する波力(F1)、③直立部に作用する全水平力(F=F1+F2+F3)、を求めるための滑動実験を実施した。また、基礎と直立部間の摩擦係数に関して、④割石基礎表面の性状の違いによる摩擦係数の差に関する実験を、さらに消波工の洗掘・沈下環象を把握するための、⑤消波工下部の割石基礎の吸出し実験を、それぞれ実施した。本報告ではこれら5項目の実験結果とその考察を示して当該様式防波堤の設計法確立に資するものである。 |