船揚場は、小型船舶や漁船を、水産物の搬入、避難、修理等の際に、陸上と海上の間で揚げ降ろすための施設である。構造的には、船を揚げ降ろすための斜路と、水平部の船置場によって構成されるのが一般的である。船揚場の舗装面は、場所打ちコンクリートで施工されるが、斜路の感潮部分と水中部分については、施工上の理由から、プレキャストコンクリート製の張ブロックが使用されている。 現在、張ブロックについては標準形状が規定されているが、その安定性を裏付けるデータは十分とはいえない。これまでにも、斜路を遡上する波により張ブロックが転倒した例もいくつかあり、現場担当者の中には、張ブロックの安定限界算定法の確立を望む声も少なくない。さらに、港湾・漁港の配置計画に際して、従来から言われてきた"船揚場斜路の消波機能の活用"という課題も、船揚場の耐波設計法が確立すれば実現する。すなわち、船揚場を港口に面する場所に配置して、波浪時には船揚場を"消波構造物"として機能させて、港内静穏度の向上に寄与することも可能とたる。こうした理由により筆者らは、船揚場張ブロックの安定性に関する実験を行なうにいたった。今年度(昭和57年度)は予備的な実験を行ない、標準的な形状の張ブロックについての安定性を検討し、さらにその転倒現象について、水理機能面から若干の解析を加えたので、その結果をあわせて報告する。 |