温根元漁港は、根室半島先端のオホーツク海側に位置し、北方四島の貝殻島に最も近い港である。その地理的優位性から貝殻島コンブ漁の基地となっており、漁港周辺はウニ、ホッカイシマエビ、ハタハタなどの良好な漁場にも恵まれ、通年、漁業活動が行なわれている。しかし、冬期間は厳しい労働条件に加え、港内の結氷及び流氷接岸による出漁機会の減少が問題となっている。また、漁業全体でも、漁業者の減少及び高齢化、漁獲量や資源水準の減少傾向等、情勢は年々厳しくなっている。これらのことから、温根元漁港の整備には、水産業の将来を見据えた、持続的生産を支える基盤として、かつ収益性の高い漁獲物生産との観点から、「資源管理型漁業の推進」、「つくり育てる漁業」への支援を求められている。一方、北海道開発土木研究所では、平成8年に防波堤のケーソンに生け簀を併設し、波浪エネルギーを利用して海水交換を図り、水産生物を蓄養できる「蓄養施設一体型構造物」を考案している。このような背景の中、温根元漁港において、「蓄養施設一体型構造物」についての検討を進めることになり、港内静穏度の向上を目的に整備を行う波除堤の一部にて、『遊水部付生け簀ケーソン』を整備することとした。生け簀ケーソンは、スリット部で波力、反射波を低減することを目的としており、副次的な効果として、遊水部の一部を「生け簀」利用するものである。本報文では、『遊水部付生け簀ケーソン』についての設計経緯、施工状況及び今後の活用方法を紹介する。 |