根室地方の基幹産業として水産業は重要な役割を果たしている。とりわけ、花咲港区(以下、花咲港と呼称)ではサンマの水揚数量は7年連続日本一であり、花咲港が漁業拠点として地域経済に大きな役割を果たしている。このため、サンマ漁の盛漁期になると花咲港では慢性的に漁船の陸揚用係船施設不足が発生し、沖合で滞船することさえも見られる。このような陸揚用係船施設不足より、サンマ等の陸揚作業に余分な時間を費やし、鮮度低下による漁価の低下を招くなど水産業に支障をきたしている。また近年、ロシアを主に外国との貿易も増加傾向の状況であり、花咲港に入港する外国船舶数は平成5年の約400隻に対し、平成15年では約1,200隻に達し、10年前の水準の3倍となっている。このため、時期によってはロシア船対応の陸揚用係留岸壁不足もあり、多重係船を余儀なくされている。このため、花咲港はほぼ全港域で陸揚係船施設不足が生じることから、施設不足を解消するため新たな係留施設の建設が望まれている。しかし、係留施設建設には澗内が非常に狭いため沖合側に係留施設を建設することになり、利用者の便宜性また新規の係船施設建設には多額の費用と長期の建設期間が必要となるため現在は第2線防波堤である南防波堤の埠頭化を計画した。南埠頭建設においては今まで設置されている南防波堤を撤去し、この際発生するケーソン及び中詰材等を南埠頭建設に再利用することで南埠頭建設にかかる費用の縮減及び建設にかかる時間短縮の効果がある。しかし、再利用する南防波堤ケーソンは昭和30年代に建設されたものであり、建設から約35年を経過し、今後50年間に亘る耐久性を有しているかの検討が必要となっている。本報文では、再利用するケーソンについて外観目視調査等の現地調査、物性試験及び化学試験等により、現況を把握し、再利用時の耐力評価から、検討経緯及び成果を報告するものである。 |