2003年8月3日に発生した台風10号は、北海道胆振地方の東端に位置する沙流川の洪水を引き起こし深刻な被害を与えた。これまでに、土木学会水工学委員会は調査団を編成しあらゆる側面からの解析を進めてきた。その中で渡邊らは、流木の挙動と影響を調査し、この大洪水により発生した当該河川流域における山間部や河道内等からの大量の流木の流下堆積状況を把握するため、河畔林の倒伏状況、流木の堆積分布や堆積量、さらに河道内での流木の発生源等について検討を行った。その結果沙流川河口から二風谷ダムまでの区間において、上流域も含め河道内や河道付近から流出したと推定される河畔性樹種の流木が全体の20%を占めており、河畔林も流木の発生源の一つであることを示した。流木は洪水時の流水の阻害を招いたり、橋脚等の河川構造物に引っ掛かり大きな流水抵抗がかかることによる構造物の破損を生じさせる場合がある。このため河畔林の流木流出対策を行うことは、洪水被害の低減につながり、今後の河川環境を踏まえた河川整備や河川管理を行う上で必要不可欠な事項となっている。洪水中の流況を把握する一つとして洪水による樹木の倒伏から流速を算定する手法が提案されている。本論文では洪水ピーク時における流況が不明であった2003年の沙流川洪水において、河畔林と洪水の関係を把握するため洪水直後に河畔林の状態を調査した結果を報告するものである。 |