近年河道内の上・下流における土砂収支のアンバランス等の課題が指摘され、河川管理において流域一貫した土砂管理の重要性が指摘されている。河川において土粒子の移動は特に増水時に顕著に生じ、下流域へと供給されることから、各地において洪水時の物質輸送に関する現地調査が実施されてきている。北海道開発土木研究所では、中流域にダム湖の存在する北海道の一級河川沙流川において、洪水時の調査を実施し、中下流域のSSや栄養塩類の挙動について把握を行ってきており、出水時の観測データ・出水前後の横断測量等を用いた土砂収支について良好な結果を得ている。沙流川中流域に位置する二風谷ダムには、年間100万m3の土砂が堆積しており、このような大量の土砂堆積は維持上の問題ともなり得る。特に2003年8月に生起した台風10号による洪水では、既往最大の流量を記録し、ダム湖にも240万m3の土砂が堆積した。本論文では、これまでの沙流川での洪水観測により蓄積されたデータをもとに、中流域にダム湖の存在する流域一貫を対象とした土砂収支の予測を行っていく第一歩として、未解明部分の多いダム湖内に堆積する粒径の非常に細かい土粒子の挙動を把握することを目的に、二風谷ダム湖の底質採取、採水した試料を用いて土粒子の沈降・浮上実験を行い、二風谷ダム湖内における沈降・浮上の推定式を導き出すこととした。さらにこの結果を利用し、2003年8月に起こった沙流川での出水時のダム湖内における現象を再現することを試みた。 |