大規模な津波が陸域に達すると沿岸域、および河川に浸入してその河道沿いで大きな被害が発生する。過去の国内の津波においてもこれらが河川に浸入して溺死や家屋が流失したなどの記録が残っている。つまり、河道に浸入した津波の危険性は決して見過ごせない。それにもかかわらず、現在のところ、この危険性に対する認識は決して高いものではない。この原因のひとつは、河道沿いの被害規模は沿岸域のそれに比べて相対的に小さいと考えられがちであることが挙げられよう。しかし、その被害規模や危険性は絶対的には小さいものではない。一方、河道内に浸入した津波の挙動に関する研究は少なく、流体力学的、水理学的な知見が十分に示されているとは言い難い状況にある。これは河川管理の観点から言い換えると、河道内に浸入した津波に伴い生じる最大水位や最長浸入距離などの河川計画および防災・避難計画の立案の上で最も基本的かつ重要な諸量について十分な理解が成されていないことを意味する。本文では、このような現状を踏まえ、河道内に浸入した津波の危険性と、このような津波の最長浸入距離やこの浸入に伴って生じる河道内の最大水位を決定する力学機構について数値実験を行いその結果に基づき具体的に示した。を示す。 |