我が国の道路交通安全施策は、道路管理者と警察、国と地方が連携して交通安全施設等整備事業を推進する仕組みが取られている。しかし現場担当者が事故対策事業を具体に実施するための指針やマニュアルは十分とは言えず、例えば日本の道路構造令は、道路の各パーツの安全性は保証するが、各パーツの組み合わせ、前後区間の特性やヒューマンファクターを考慮した場合の安全性に関しては、設計者の技術的な判断に委ねられ、危険を避ける運用をするように定められている。道路構造設計基準における安全に関する記述が十分とは言えないことは、各国共通の事情でもある。このような問題を解決するために、90年代はじめに英国で導入された道路安全監査制度が導入された。道路交通安全監査は、道路の潜在的な危険性を評価し、対策を提案する制度である。従来の施策と大きく違う所は、安全面のアセスメントを外部の専門家チームが監査することである。道路交通安全監査は、新たな交通安全対策としてその優秀さが認められ、世界各国へと普及しはじめている。北海道においても、一層の交通事故死者数を削減するために、道路交通安全監査制度のような新たな交通安全政策の導入が期待される。しかし我が国における道路の安全性は、道路管理者が管理責任を負っていて、外部の監査人による設計改善勧告は、責任の所在が不明確になる問題があり、導入が難しいと推察される。本稿は、道路交通安全監査制度の監査プロセスや手法を検討し、この制度の中心となる事故リスクを監査するためのチェックリストと事故対策を選択するためのチェックシートを作成し、制度の運用方法について検討し、道路管理者自らが道路の安全性を監査できる道路交通安全管理制度を提案することについて報告する。 |