藻場は藻食動物の摂餌場、稚仔魚の産卵・保育場、小魚を食べる大型魚類の蝟集場として重要な機能を果たしている。また、最近では水質浄化機能や二酸化炭素吸収作用の側面から地球環境保全上も重要性が認識されている。北海道沿岸域にはコンブ場、アマモ場等が存在するがコンブ類は水産有用海産物として、またウニ・アワビ等有用動物の餌料となるなど非常に重要な海藻である。しかし、近年、北海道日本海沿岸ではコンブ藻場が形成されない磯焼け現象が進行し、原因の解明と藻場回復のための対策が急務となっている。藻場形成の阻害要因として、①コンブの葉体初期(3月頃)におけるウニ類などの藻食動物による摂餌の影響、②コンブが発芽する冬期から春季の海水温の上昇、あるいはこれに伴う栄養塩の減少、陸域からの鉄分供給不足等が考えられる。特に、道南日本海沿岸は、キタムラサキウニが高密度で分布しており、①の要因が大きいといわれている。磯焼けの発生および継続原因を解明し、対策を講じるためには、ウニ等の藻食動物が藻場形成過程に及ぼす影響を定量的に明らかにする必要があるが、これまでに継続的な観測事例はほとんどない。一方で、港湾・漁港施設等の整備を行う上で、防波堤などの構造物は、その本来機能である防波、防砂機能だけではなく、周辺の自然環境と調和されることが求められている。このような背景から、北海道各地において、エコポートモデル事業、自然調和型漁港づくり推進事業等が推し進められている。江良漁港においても、防波堤背後に浅場領域を創出し、水生生物の生息に寄与できる機能を付加した自然調和型構造断面となっており、建設当初は基質が新しいこともあり藻場は形成された。しかし、数年後には磯焼けといわれる無節サンゴモとウニがはびこる状態となっている。そこで、このような状態を解消するために、海藻が付着しやすい工夫をした基質を設置した。本報告では、防波堤背後小段上に鋳鉄製の石かごを設置し、海藻繁茂状況を観察することにより、海藻着生基質としての有効性の検討を行った結果について報告する。観察手法として、水中ビデオカメラを用いた連続観測及び潜水観察により、藻場の繁茂状況やウニの蝟集状況を把握するとともに、周辺海域で流動・水質・生息生物等の調査を行い、海域の海藻繁茂特性を把握した。 |