最近では港湾ストックが増加するなか、順次老朽化してきている施設を適時、適切な改良・維持の実施によるライフサイクルコストの低減を図る施策が進められてきている。建設後、数十年経過した老朽化施設を改良する場合、所期の機能を有する範囲で既存の耐力を生かしながら安価に断面を改良設計する施設整備が求められてきている。港内施設である係留施設の一つに桟橋式岸壁がある。桟橋式岸壁は軟弱地盤に適した係留施設であり、多くの実績を積み重ねて最近では大水深域での採用事例も増加している。桟橋の床版に作用する波力算定法は波高をパラメータとし、床版に等分布で作用すると仮定した等価静荷重としてpρ=4ogHで求める方法が一般的な波力算定法である。しかしながら、既設の構造を改良する場合の課題として、建設後、数十年経過した施設を改良する場合、鋼管の残存耐力の低下、根入れ長さの不足、設計基準の見直しなど、限られた設計条件のなかで改良設計を行う必要があり、現行基準どおりに設計を行った場合、断面が成立しない場合が少なくない。渡部らは斜め入射時における波力の発生機構を明らかにし、床版への作用波力を低減できることを示していることから、条件によっては桟橋床版に作用する波力を低減することが可能である。本報告では、消波ブロックによる波力低減が期待できることに着目して、床版下に消波ブロックを有する桟橋構造について水理模型実験を行い水理特性を明らかにするとともに、床版への波力低減を考慮した直杭式横桟橋構造の設計法について報告する。 |